最近、新聞やニュースでたびたび話題に上がるNFT。
そんなNFTですが、実は「音楽業界」でも適応されているのはご存知でしょうか?
NFTプラットフォームを通じて、有名アーティストのデジタル音楽作品やオリジナル楽曲などを購入することができます。
もちろんその音楽はNFTなので、コピーや改ざんはできないようになっており、唯一無二の作品です。
本稿では「NFT音楽とは」から「NFT音楽の出品・購入方法」「高額で取引された事例」など徹底的に解説していきます。
NFT音楽とは
NFT音楽とは「アーティストが自分の楽曲をデジタル音楽コンテンツとしてNFT化したもの」を指します。
自分の音楽作品を持つアーティスト達は、実際の音源とソースファイルをマーケットプレイスに出品してユーザーに販売できます。
その作品を購入したユーザーはその音楽の所有権を持つことになり、所有者は保有したり、再販(転売)したりできます。
例えば、倖田來未さんがオリジナル音源をNFT化したとしましょう。
その音源はNFT化されているため唯一性が担保されてます。そのオリジナル音源を購入して持っておくこともできますし転売することもできるわけです。
NFT音楽の3つの特徴と仕組み
仕組み①:直取引で中抜きを回避できる
1つ目の特徴として「ユーザーと直取引ができるため、中抜きを回避できる」のが特徴です。
例えば、これまで音楽アーティスト達はレコード会社やAppleやSpotifyなどのストリーミングプラットフォーム介して音楽の収益を上げられていたため、収入の一部を中抜きされて手元に入ってきました。
しかし、NFTの誕生で仲介業者を介することなく、プラットフォーム上で支払う手数料以外のほとんどの金額を自分の利益にできるようになりました。
仕組み②:再販(転売)時にも収益を得られる
2つ目は「再販(転売)時にも収益を得られる仕組み」です。
音楽業界では購入した音楽コンテンツを他者に再販(転売)するケースは頻繁に起こりますよね。
例えば、中古音楽ショップで購入したCDをメルカリやラクマなどで第三者に売却するといった方法です。
このような再販(転売)の仕方においては、音楽コンテンツが第三者に転売されてもアーティストにお金(ロイヤリティ)は入りません。
しかし、NFTの誕生によって転売時にもアーティストが収益を得られるような仕組みをプログラムできます。
つまり、NFTは音楽のコンテンツ作成者であるアーティストにより多くの利益を還元させることが可能となっています。
仕組み③:アーティストの知名度拡大に利用できる
3つ目は「アーティストの知名度拡大に利用できる仕組み」です。
最近ではアーティスト活動をさらに促進できるよう、アーティストだけでなく、ファンにもロイヤリティが発生する仕組みをプログラムしたプラットフォームも存在します。
条件はプラットフォームによって異なりますが、ファンが購入した音楽コンテンツが世に広まれば広まるほど、ファンの手元にロイヤリティが入ってくるのです。
それゆえ、ファンは自分が好きなアーティストの音楽コンテンツをより広めようと活発的な広報活動を行うため、アーティストの知名度もより高まる仕組みになっています。
そのため、ファンにもメリットをもたらすことができ、アーティストと双方にメリットがあるのがNFT音楽です。
このような新たな仕組みが生まれたため、知名度の低いアーティストでも音楽活動での活躍の場を広げられるチャンスが大きくなっています。
NFT音楽が高額取引された6つの事例
「NFT元年」とも言われる2021年に数々のアーティストが市場に参入しました。
ここでは2021年にNFT音楽の活動で目立った6組のアーティスト達を紹介します。
事例①:3LAU
Just a bored ape in NYC on Halloween@BoredApeYC pic.twitter.com/zxuE7ODfJe
— 3LAU (@3LAU) November 1, 2021
3LAUはアメリカで活動するEDMのDJ兼プロデューサーです。
DJやプロデューサーとして活動している3LAUですが、2021年からはNFT音楽に関する取り組みでも活躍しています。
2021年2月に、自らの過去のアルバムをNFT化して販売したところ、1,170万ドル(約13億円)の売上を出し、注目を浴びました。
過去1年間の十数回のオークションで、すでに合計2,000万ドル以上を売り上げています。
また、彼は2021年8月には創業された音楽プラットフォーム「Royal」の創業者でもあります。
Royalはアーティストが音楽コンテンツを作成・販売することの支援やユーザーが音楽コンテンツを購入できるようにするサービスなどを展開しており、登録ユーザーは12万人以上に上ります。
この活動はThe Chainsmokers、Kygo、Disclosureといった世界的なアーティストの協力のもと、11月には約63億円(5500万ドル)の資金調達に成功しています。
今後は、Royalを通してライブのチケットやバックステージパス、グッズなどの特典を提供できるような構想を立てているようです。
事例②:RAC
me, having the best time ever in miami pic.twitter.com/1Jn0WdJC1I
— rac.eth (@RAC) August 21, 2021
RACはアメリカの音楽プロデューサーであり、グラミー賞の受賞歴もあるアーティストです。
RACはブロックチェーンを活用した「RACドル」というトークンを発行し、レーベルなどの第三者と切り離されたアーティストとユーザーを直接つなぐための新たな仕組みづくりに取り組んでいます。
2021年3月には専門エージェンシー「6 digital」を立ち上げ、アーティストがNFTを使った音楽コンテンツのリリースをするための手助けをしていくと発表しています。
事例③:マイク・シノダ
リンキン・パークのマイク・シノダ、Twitchでのファンとの交流から生まれた最新ALをリリース https://t.co/mDmNHWiVW1 pic.twitter.com/6gwKodHxY3
— Billboard JAPAN (@Billboard_JAPAN) July 13, 2020
マイク・シノダは世界的に有名なロックバンド「リンキン・パーク」のボーカリスト、ギタリスト、キーボーディストです。
近年ではソロでの音楽活動が多く、2021年初頭には市場に参入しています。
マイク・シノダはマーケットプレイス「Zora」で、NFT形式で発行された音楽作品のオークションを開き、『One Hundredth Stream』という音楽作品をリリースしました。
作品は約317万円(3万ドル)で落札され、注目を浴びた事例もあります。
また、この販売で得た資金3万ドルはマイク・シノダのファンド「Michael K Shinoda Endowed Scholarship」に寄付されています。
事例④:キングス・オブ・レオン
キングス・オブ・レオン、宇宙で再生した音楽をNFTでオークションに 音楽業界初の試みhttps://t.co/2GNFxFNXzJ pic.twitter.com/T6EYdazSDw
— ELLE Japan (@ellejapan) September 10, 2021
人気ロックバンドのキングス・オブ・レオン。
彼は「NFT Yourself」という作品をNFTオークションに出品し、約2億4000万円の売上をあげました。
当作品には次の特典が付いていることで注目を集めました。
- メンバーが撮影した写真や限定盤のレコードが含まれる
- 生涯を通じて最前列でライブに参加できるゴールデン・チケット付き
キングス・オブ・レオンの他にも数々の海外アーティストがNFT業界へ参入しています。
事例⑤:Perfume
人間とテクノロジーの関係を探究しているクリエーター集団であるライゾマティクスがPerfume初のNFTアートを2021年6月に販売しました。
NFT化されたのは2020年9月21日に開催したオンライン・フェス「P.O.P” Festival」で披露した「Imaginary Museum “Time Warp」が元になっています。
振付のなかでとっているPerfume3人の象徴的なポーズが3Dデータ化してNFTアートとして表現されています。
オークション形式で販売した当NFTは約325万円で落札されて大きな注目を集めています。
事例⑥:MIYAVI
2021.9.15. New AL “Imaginary” out
915、ニューアルバム「IMAGINARY(イマジナリー)」出ます。
コロナの影響でロサンゼルスに飛べない状況の中で
東京で創る意義、というか
「東京でしか創れない作品」にしたかった。 pic.twitter.com/eKxus2Wtjo
— MIYAVI (@MIYAVI_OFFICIAL) August 24, 2021
2021年10月に世界的ギタリストのMIYAVIがマーケットプレイス「KLKTN」にてNFTプロジェクトを開始しました。
当プロジェクトは2021年9月に発売されたアルバム「Imaginary」に加えられたもの。MIYAVIはアルバム発売に際して次のコメントを残しています。
「世界は反転する。想像力、創造力こそが未来を創る未来を創る唯一の扉だと僕は本気で信じています。」
さらに、2022年1月2日には非公開Discordへの招待付NFTやMIYAVIのシグネイチャーギターのNFTなど7つのNFTアイテムを販売しました。
NFT音楽の今後の見通しと可能性
話題性はあるものの、世間にはまだまだ浸透しきっていないNFT音楽。
一体、今後はどのようになっていくのでしょうか。
ここから「NFT音楽における今後の見通しと可能性」を3つの観点から解説します。
①:音楽業界でNFTがますます活発化する
1つ目に「音楽業界でNFTがますます活発化する」ことが考えられます。
アーティストやユーザーにさまざまなメリットがある市場に対して、リンキン・パークのマイク・シノダやEDMの有名DJである3LAUなど一部のアーティストはすでに着目しています。
アメリカなどでは、有名なアーティストが市場に参入することで期待値が上がっている一方で、日本国内ではまだその傾向が見られません。
ただ、音楽に限らずNFT市場全体で見ると世界的VRアーティストであるせきぐちあいみや、「フラワー」の作品で有名な現代美術家である村上隆など多くの国内アーティストが市場で活躍しています。
日本の市場が盛り上がることで、音楽業界にも良い影響を与えられるといえるでしょう。
②:マーケットプレイスが拡大する
2つ目に「マーケットプレイスが拡大すること」が考えられます。
NFTが日本国内の音楽業界は進んでいない理由として、音楽コンテンツを取引できるマーケットプレイスが少ないことが挙げられます。
音楽コンテンツを取引できるマーケットプレイスは、国内だと「.mura」や「The NFT Records」などがありますが、まだまだ利用者が少ない状況です。
マーケットプレイスがこのように少ないと、アーティストが音楽コンテンツを販売するメリットも少なくなります。
ただし、2021年現在ではようやく世間に知られるようになった段階であるため、売買するマーケットが拡大することで取引額は一気に拡大することが期待できます。
③:ガス代が高騰していく
3つ目に「ガス代が高騰していく」ことが考えられます。
音楽業界では市場の拡大が見込まれているものの、このまま取引が増えていくことで「ガス代」が高騰していくという懸念もあります。
ガス代とは、イーサリアムという仮想通貨のブロックチェーンで取引をする際に発生する手数料です。
現在、NFT音楽のほとんどはイーサリアムのブロックチェーン上で作成されているため、ガス代とは切っても切れない関係となります。
ガス代はブロックチェーンを利用するユーザー数(通信量)に比例して増える仕組みとなっているため、今後市場が大きくなるにつれてガス代が高騰してしまう可能性があります。
しかし、ガス代の高騰は市場全体の課題として捉えられているので、ガス代が発生しないマーケットプレイスが今後勢いを増していく可能性もあります。
NFT音楽の作成方法と販売方法
ここからは「自分で作成した音楽コンテンツを実際に販売してみたい」という方に向けた内容です。
下記で「NFT音楽の作成方法と販売方法」を具体的な手順に沿ってご紹介します。
ステップ①:デジタル音源の楽曲を用意する
まずは、デジタル音源の楽曲を作成し用意する必要があります。
この段階では特別な手順を踏む必要はなく、通常通りに楽曲を作成すれば問題ありません。
ただし、著作権の保有者がいないオリジナルのデータである点は注意しましょう。
ステップ②:仮想通貨を購入する
楽曲を用意したら、次は仮想通貨を購入しましょう。
仮想通貨取引所の口座を開設し、マーケットプレイス上の購入や売買などの取引で使われるイーサリアム(ETH)を購入します。
CoinchekやGMOコイン、bitFlyerなどが有名な仮想通貨取引所として挙げられます。
ステップ③:仮想通貨のウォレットをインストールする
イーサリアムを購入したら、仮想通貨のウォレットをインストールしましょう。
仮想通貨のウォレットとは、いわば仮想通貨の保管する財布のようなものです。
イーサリアム系の仮想通貨と相性のよい「メタマスク」と呼ばれるウォレットをインストールすることをおすすめします。
NFT取引をするには「MetaMask(メタマスク)が必要」とよく聞きますよね。しかし一体何のことなのか分からない人も多いのではないでしょうか。簡単に言うと、MetaMaskとは仮想通貨を管理する為のウォレット(財布)のこと[…]
ステップ④:マーケットプレイスに出品する
メタマスクをインストールできたら、最後はマーケットプレイスで登録をして音楽コンテンツとして出品するだけです。
Openseaと呼ばれる海外のマーケットプレイスがもっとも規模が大きく、整備もされているのでおすすめです。
ほかにも「.mura」や「The NFT Records」といった日本のマーケットプレイスもありますが、中にはNFT音楽の取引ができないところもあるので気をつけましょう。
NFT音楽の購入方法
次は、NFT音楽を手に入れたい方に向けて購入方法を解説します。
購入するために必要なものは販売方法と同様で、仮想通貨取引所の口座・仮想通貨のウォレット・マーケットプレイスへの登録の3点です。
販売時と違うことは、イーサリアムを必要な分だけ用意しておく必要がある点です。
イーサリアムは仮想通貨であり、日々価格が変動しているため、時間の経過とともに購入できるイーサリアムの金額は変わります。
最近は仮想通貨のブームのなかにあり、イーサリアムの価格も上昇傾向にあります。
そのため、「前日の価格よりも高くなっていて買えない」という事態が発生することも珍しくありません。
音楽コンテンツを購入される方は、毎日イーサリアムの価格変動を見ておくといいかもしれません。
まとめ
NFTという新たな価値が創出されたことで、音楽コンテンツの転売時にアーティストに手数料が入る仕組みができました。
また、アーティストが活躍することで音楽コンテンツのファンにロイヤリティが入るような仕組みもでき、アーティストとファンの双方が得できるようになったという特徴もあります。
しかし、まだ市場ができたばかりということもあり、特に国内ではNFT音楽がなかなか普及していないという課題もあります。
今後は有名なアーティストが参入することで、市場がより大きくなることが期待できます。